バイクの電子制御サスペンションの仕組みとは?

バイクの電子制御サスペンションの仕組みとは?

 

フラッグシップのスーパースポーツには、電子制御サスペンションが搭載されるのが当たり前になってきました。路面の状況に合わせて自動でダンパー特性を調整するシステムで、快適性や走行性能を高めることができます。

 

かなり高価な機器なので200万円以上のモデルにしか搭載されていませんが、今後は間違いなく普及が進んでくるはずです。もっと価格が安くなれば、ミドルクラスのバイクにも搭載されるかもしれません。

 

ここでは、電子制御サスペンションの仕組みや効果について解説をしていきます。

 

 

電子制御サスペンションとは何か?

 

 

その名の通り、前後サスペンションのダンパー特性を、電子的に調整するのが電子制御サスペンションです。

 

従来のアジャスタブルサスペンションでは、工具を使って手動で調整しなくてはいけませんでした。一度設定すると簡単には変えられませんし、運転をしながら何度も調整が必要になるなど面倒な部分が多かったんですね。

 

でも、電子制御サスペンションであれば、走行中に路面状態を検知して、リアルタイムで最適なダンパー特性にセッティングしてくれます。ライダーは何もせずとも、ECUの働きにより全自動で調整されるわけです。

 

 

複数のモードを選択できるのが一般的で、乗り心地を重視したモードから、操縦性を重視したスポーツモードまであります。

 

路面から来る衝撃を最小限にすることで長距離の走行でも疲労が軽減されますし、サーキットや峠での走行時には最適化された減衰力によってコーナリング性能を高めることができるはずです。

 

色々な状況に合わせて調整が可能なので、走りの質を圧倒的に高められるでしょう。

 

 

単純なモード選択からリアルタイム調整へ

 

電子制御サスペンションが実用化されたのは、2004年のBMW・K1200Sからです。あらかじめメーカーが用意したセッティングの中から、自分で選択するというものでした。

 

その後、スプリングプリロードも調整できるように進化しました。この時点では、単なるサスペンションの調整機構だったので、走行時のフィーリングを劇的に変えるというレベルには達していません。

 

 

2012年になると、走行時の状況に合わせてセッティングを自動調節する、セミアクティブサスペンションが登場しました。リアルタイムに微調整をしてくれるので、常に最高の状態で走行できるようになったわけです。

 

 

電子制御サスペンションが搭載されているバイク

 

CBR100RR SP/SP2(ホンダ)

 

 

ホンダのフラッグシップのスーパースポーツであるCBR1000RRですが、その上級モデルに電子制御サスペンションが採用されています。

 

オーリンズ製の「Smart ECシステム」で、ダンパー特性を自動調整するオートモードとマニュアルモードを選択することができます。

 

オートモードで選べるのは、以下の3種類です。

 

参照:ホンダ

 

 

  • A1 (Track):サーキットでのスポーツ走行を目的とした特性
  • A2 (Winding):ワインディングでの走行を目的とした特性
  • A3 (Street):路面の衝撃を吸収して快適な走行を目的とした特性

 

 

マニュアルモードに関しては、21段階の細かな調整が可能ですね。どんな状況下であっても、自分に合った特性を見つけることができるはずです。

 

 

YZF-R1M(ヤマハ)

 

 

ヤマハのフラッグシップモデルであるYZF-R1で、上級グレードのYZF-R1Mには電子制御サスペンションが搭載されます。

 

最新の6軸IMUからの情報を基に、バイクの挙動や路面状態に合わせて最適なダンパー特性に調節してくれます。

 

こちらも、ホンダと同じくオーリンズ製のサスペンションとなっていますね。

 

 

ZX-10R SE(カワサキ)

 

 

カワサキのニンジャZX-10Rシリーズで、「SE」というグレードに電子制御サスペンションが採用されました。

 

ショーワと共同開発のKECS(カワサキエレクトロニックコントロールサスペンション)を搭載しており、電子制御のセミアクティブサスペンションですね。

 

市販車として初めて、前後サスペンションにストロークセンサーを内蔵しました。これによって、ストローク量やストロークスピードを検知することができ、最適な減衰力に調整することが可能です。

 

「マニュアル」「ロード」「トラック」の3つのモードから選択でき、ストリートからサーキットまで対応することができます。マニュアルモードでは、15段階の調節が可能となっています。

 

 

ムルティストラーダ1200S(ドゥカティ)

 

 

2013年型以降から、電子制御サスペンションのDSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)を採用しています。路面状況を検知して、自動でダンパー特性を変化させるのは同じですね。

 

IMU(慣性計測装置)によって車体の情報を検知し、ABSやトラクションコントロールと合わせて最適なセッティングを行ってくれます。不安定な悪路でもバイクの挙動を最小限に抑えるので、安全かつ快適に走行できるでしょう。

 

 

S1000RR(BMW)

 

 

BMW独自のDDC(ダイナミックダンピングコントロール)を搭載しています。車体各部のセンサーによって、スピードやスロットル開度、車体姿勢や前後ホイールの回転差などを検知し、最適なダンパー特性を決定します。

 

1000分の1秒単位でダンパー調整を行うので、かなり精密なセッティングが行われていますね。車体の挙動が一定に保たれることで、バランスを崩すことなく安全に走行できるようになっています。

 

 

 

以上、電子制御サスペンションについて解説をしました。

 

まだまだ少数のバイクにしか搭載されていませんが、将来的には当たり前の装備になるかもしれません。簡単な仕組みについて知っておくと、バイク選びの参考になると思います。