CBR250RRは電子制御スロットルを搭載!スロットルバイワイヤとは何か?
2017年にホンダのCBR250RRが復活し、250ccで初めてスロットルバイワイヤを搭載したことで話題となりました。電気信号でスロットル操作を行うシステムで、人間の手よりも細やかなアクセル操作をすることができます。
最新のスポーツバイクに採用されるスロットルバイワイヤですが、通常のメカニカルワイヤーを使う方式と、どのように異なるのでしょうか?そのメリット・デメリットについては、あまり知られていません。
ここでは、スロットルバイワイヤについて詳しく紹介していきます。
目次
スロットルバイワイヤの仕組みと効果
スロットルバイワイヤとは、アクセル開度を電気信号に変換して、コンピュータによってスロットルバルブを開閉する仕組みとなっています。
詳しい仕組みは、以下の通りです。
- アクセル開度を電気信号に変換する
- ECU(エンジンコントロールユニット)が電気信号を検知
- モーターに指示を出してスロットルバルブを開く
アクセルとスロットルバルブは、物理的にワイヤーでつながっていません。電気信号にするメリットとしては、コンピュータが最適なアクセル開度を決定できるということです。
たとえば、コーナーの立ち上がりでアクセル全開にすると、後輪タイヤがスリップして転倒する恐れがありますよね。そういった時にも、コンピュータが安全なアクセル開度に調整することで、転倒のリスクを避けることができるわけです。
バイクの挙動や路面状況などを考慮して、その場に適したアクセルワークが簡単にできるようになります。ライダーの操作以上にアクセルが開くことが無いので、意図せずに加速してしまう心配もありません。
メーカーによって名称が異なっており、ヤマハではYCC-T、ドゥカティではライドバイワイヤ、トライアンフではフライバイワイヤといった呼び方をしていますね。
部分的にメカニカルワイヤを使用していたり構造は異なっていますが、基本的には電気信号でアクセル操作を行う仕組みです。
スロットルバイワイヤのメリットとは?
電気信号によるアクセル操作のメリットは、以下のようなものがあります。
- 急なアクセル操作による転倒を避ける
- 燃費を抑える
- メカニカルワイヤの劣化によるトラブルを防ぐ
- 左右均等にアクセルワークができる
- エンジン性能を最大限に発揮できる
急なアクセル操作による転倒を避ける
路面が濡れていたり、凍結していたり、コーナリングの出口付近など、急にアクセルを全開にするとスリップしてしまう状況があります。ライダーのスキルが未熟な場合には、間違ったアクセル操作をしてしまいがちです。
しかし、電子制御によってアクセル開度を決定すれば、危険な場面ではアクセルを弱めるようになっています。手動で全開にしたとしても、スロットルバルブの開度が制限されるわけです。
派手なアクセル操作をしても事故を防げるので、誰が乗っても安全に運転することができますね。
燃費を抑える
スポーツ走行などでアクセルを開けすぎると、十分なトラクションを得られないまま燃料の噴出量が増えてしまいます。これによって、燃費が悪くなってしまうわけですね。
でも、スロットルバイワイヤによる電子制御があれば、燃料噴射量も適切に調整されていきます。最小の燃料でトラクションが得られるようになるので、燃費の向上が期待できるでしょう。
メカニカルワイヤーの劣化によるトラブルを防ぐ
通常のバイクでは、アクセルとスロットルバルブが、物理的にメカニカルワイヤーでつながっています。これだと、ワイヤーが劣化してしまった時に、スロットルバルブの反応が遅れたりするわけです。
最悪の場合、ワイヤーが切れてしまうと、走行不能な状態になることもあります。
しかし、電子制御なら物理的なワイヤーは繋がっていないので、劣化する心配はありません。いつでも変わらない操作感を得ることができ、走行時のフィーリングが変わることも無いでしょう。
左右均等にアクセルワークができる
普通のバイクだと、ハンドルを左右に切ったときに、アクセルの遊びが異なってしまいます。具体的には、右にハンドルを切るとアクセルの遊びが小さくなり、左に切ると遊びが大きくなるわけです。
これに気付かないライダーは多いので、コーナリング時にアクセルワークが乱れてしまいます。運が悪ければ、転倒して反対車線に飛び出してしまう危険があるでしょう。
でも、電子制御だとワイヤーでつながっていないため、そういった失敗をすることはありません。左右どちらの旋回でも、同じように曲がることができるはずです。
エンジン性能を最大限に発揮できる
ECUがアクセル開度を調節してくれるので、いつでも最適なトラクションをタイヤに与えることができます。アクセルを開きすぎてタイヤが空転することを防いで、無駄にパワーをロスすることがありません。
なので、エンジンが持っている性能を、すべて引き出すことができるわけです。アクセルをひねるだけで最適化されるため、誰が乗ってもベストな走行ができるようになるでしょう。
スロットルバイワイヤのデメリットとは?
良いことずくめのように見えますが、スロットルバイワイヤにも欠点はあります。
- アクセルのフィーリングに違和感が生じる
- 意図に反してアクセル開度が決められてしまう
- 車体価格が高くなる
- 電子回路が故障すると走行できなくなる恐れがある
アクセルのフィーリングに違和感が生じる
アクセルとスロットルバルブがワイヤーでつながっていないので、昔のバイクに慣れた人だと違和感があるかもしれません。加速時のダイレクト感が失われることで、満足できない人もいるでしょう。
しばらく乗れば慣れると思いますが、独特の感覚を嫌う人も少なくないと思います。
意図に反してアクセル開度が決められてしまう
いつでも最適な走行をするためにプログラムされているので、特殊な運転をするときには向いていません。たとえば、タイヤを温めるためにバーンアウトしたり、ウイリー走行をするときなどです。
必要以上にスロットルが開きませんから、イレギュラーな運転をすることはできないですね。日常の走行には問題ありませんが、変わった乗り方をしたい時には対応できないでしょう。
車体価格が高くなる
色々な電子機器が必要になるので、スロットルバイワイヤを搭載すると価格が高くなってしまいます。そのため、ハイエンドのバイクにしか搭載されず、普及が遅れているという面がありますね。
まだまだ少数のバイクにしか対応しておらず、一般的には導入が難しいです。これから価格が安くなってくれば、エントリーモデルにも搭載が広がっていくかもしれません。
電子回路が故障すると走行できなくなる恐れがある
コンピュータに異常があって電子信号を検知できなくなると、走行することができません。走行時に故障することで、急に止まってしまうこともありますね。
物理的なワイヤーなら自分で修理できますが、電子機器になってくるとプロに頼まないといけないでしょう。ECUなどの交換が必要になると、作業が終わるまでに日数がかかりますし、金額も高くなりがちです。
滅多に故障することは無いでしょうが、電子機器なので気を遣う必要はあるでしょう。
以上、スロットルバイワイヤのメリット・デメリットを紹介しました。
最新のバイクにはテクノロジーが詰め込まれているので、どんどん性能が向上しています。運転の質を高めたいのなら、スロットルバイワイヤを搭載したバイクを選ぶようにすると良いでしょう。